一度は絶滅してしまった鶏を信念と努力によって復活させた!のですが、それを食べるってなんて人間とは罪深いのでしょう。おいしいので仕方ないですが。
熊本県の地鶏の一種である「天草大王」は一度絶滅してしまった後に、少ない文献を元に復活した鶏として有名です。
熊本県山鹿市にて、その天草大王をしっかりと食べることの出来るお店があり、天草大王のうまさをしっかりと堪能してきました。
絶滅から蘇った地鶏「天草大王」は、文献から復活しました。
熊本県には古くからいる5種類の鶏が「肥後五鶏」(ひごごけい)という総称にて存在指定ました。
肥後五鶏の全5種類
- 肥後チャボ
- 久連子鶏
- 熊本種
- 地すり
- 天草大王
天草大王はその中の一種でしたが、昭和になって絶滅してしまい、この世から姿を消してあの世に旅立ったわけですが、1976年に、たぶんですが鶏好きな人が復活させよう!とノリでいったことがプロジェクトとなって進み、復活活動が開始されました。
その時に参考にした資料というのが、なんと「絵」と「わずかな文献」
実際に見たことも無い鶏を妄想をしながら復活させたという訳です。
絵から実際のサイズ感、わずかな文献から、天草大王という鶏のルーツを特定し、種の掛け合わせによってこの世に復活させました。
「天草大王は明治中期頃、中国から長崎・島原経由で輸入されたランシャン種を基に、天草地方で肉用に適すように極めて大型に改良されたもので、大型の雄は背丈が90センチ、体重が一貫七百匁~一貫八百匁(6,375 - 6,750g)に達した」
出典:Wikipedia
しかし、この活動はいきなりとん挫します。中国にいるはずの狼山種(ランシャン種)が輸入できないようになっており、元になる鶏が手に入らなくなったからです。結果的には、アメリカにてランシャン種が飼育されていることが分かり、中国原産ではなく、アメリカ輸入にて天草大王の復活の道は開けたことになります。
実際に復元が完了したのが2000年とのことですので、1976年のスタートから実に24年もの歳月をかけて、天草大王はあの世からの復活を遂げたことになります。
そんなプロジェクトXに取り上げられそうなエピソードを持った鶏は、なかなかお目にかかる事は出来ません。
天草大王は、肉が好きな人は是非食べて欲しい、人の情熱がほとばしる鶏肉なのです。
天草大王のおすすめは「もも肉」大型種ならではの大きめのカットが非常に良い。
天草大王をオーダーする際の絶対のおすすめは「もも肉」です。
適度な脂がついていますが、この脂がくどくないので本当にいくらでも食べ進めることが出来ます。
↓天草大王のもも肉 大ぶりなカットが非常に合う肉質でした。
胸肉もおいしいですが、もも肉に比べると味わいが薄かったです。鶏のももを嫌がる方はニワトリ独特の脂の臭いが無理!という場合も有りますが、質の良い鶏の脂は一般的に市販されているものと一線を画します。
是非、肉のうまさとして脂の味を堪能してほしいです。
↓天草大王の胸肉。さっぱりとした味わいは胸肉の特徴ですが、もも肉と食べ比べて初めて良さは分かると思います。胸肉を食べる場合は、もも肉との食べ比べは必須です。
天草大王の肝も是非堪能しましょう。鶏の肝は他の種に比べてもとにかく鮮度が命と思っているのですが、鮮度良い天草大王の肝はとにかく甘い!
これまで食べてきた鶏の肝の概念が変わるほどのインパクトです。
↓天草大王の肝。鮮度が良いのが肝の切り口でもわかる。
同じ鶏でも、種によってこれほどまでに味が変わるかというカルチャーショックを受けました。
思えば、牛肉だっていつも食べている黒毛和種と熊本・高知で食べることのできる褐毛和種では味わいに違いが有ります。
鶏さんも当たり前に味が違いました。
天草大王を食べることの出来るおすすめの店 熊本県山鹿市の 地どり庵 三蔵
天草大王は復活を遂げていますので、少量ながらも流通もしており都内などでも食べることは出来ます。
しかし、折角堪能するのであれば、その土地にいって腹一杯食べることは重要です。
熊本県山鹿市、その山々の中に「地どり庵 三蔵」というお店があります。
このお店では天草大王を安価にボリュームタップりで食べることが出来るのでお勧めです。
↓地どり庵 三蔵 熊本県山鹿市
お店の入り口部分から天草大王を前面に押し出しており、期待が高まります。
この地どり庵 三蔵さんでは初めて天草大王を食べる人にはレクチャーしてくれます。
どういったレクチャーをしてくれるかというと、お店独特の焼き方である「揉み焼」です。
天草大王のもも肉を網の上に置いたらそこからはトングを使いながらもみながら肉を焼いていきます。
この揉み焼をすることによって、肉から落ちた油によって出てくる煙が均等に肉に触れ、スモークされたような状態になるため肉が美味しく焼けるとのこと(お店の人談)
これまで私は「炭火」で肉を焼くことを良しとしてませんでした。火加減は難しいし、落下する油による煙で肉に変な味は付くし、良い点が見いだせていなかったわけです。
しかし、今回の説明を聞いて「そういう考え方も有りかも!」と、まさに目から鱗の説明でした。
↑半生の状態までモミ焼をした状態。この状態になったら日から遠ざけて、食べる分だけ最後の火入れをします。
天草大王の肉は、まずとても柔らかいことに驚きます。大型種だからでしょうか?通常食べている地鶏と呼ばれる肉と比べて、明らかに歯ごたえが柔らかめです。
しかし、単純にぶよぶよしているだけでなく弾力も有り不思議な感覚になります。
噛むほどに鳥の旨味が溢れ出てきて、一緒に食べている人も私も「うまい」以外の言葉は無く、ほぼ無言で食べ続けてしまいました。
いつも食べている鶏肉や地鶏とは全く違った味わいが楽しめる天草大王は、熊本県に足を運んだ際には、時間を費やしてでも食べておかなければならない鶏だと思いました。
鶏肉はうまい肉とまずい肉の差があまりないのが特徴と勝手に思っているのですが、この天草大王のもも肉にはやられました。うますぎます。また時間を取って食べに行こうと思うのですが、山鹿市には他にもおいしい地鶏の店があり、贅沢な悩みが出てきた入りします。