北海道根室市に出張・観光で訪れたのであれば食べておきたい名物があります。それが「エスカロップ」
名前だけ聞いても一体何料理なのか?と不安になる名前です。
このエスカロップが生まれたお店「モンブラン」はもうないのですが、その味を引き継いでいる「ニューモンブラン」「どりあん」を食べ歩くことにより、エスカロップの歴史を紐解いてきました。
思わぬ場所がエスカロップ誕生に関わっていることもわかり非常に楽しい歴史探訪の旅となりました。
結論
- エスカロップとは、元々の意味は「魚や肉の薄切り」、根室の名物のエスカロップはバターライスにカツがのりデミグラスソースがかけてある料理。
- 根室名物のエスカロップは新橋・グリル明治のエスカロッピーニを元に根室で生まれる。
- メニューを作った「モンブラン」は廃業。モンブランから独立した人が「ニューモンブラン」「どりあん」というエスカロップを根付かせた2店を作る。
根室市だけで食べられている謎の料理「エスカロップ」
ほとんどの人が「エスカロップ」と単語だけを聞いても、それが料理名を指していることすらわからないと思います。しかし、北海道の根室市の飲食店でこのエスカロップという謎の単語を発したとしたらならば、当たり前のように一つの料理が目の前に運ばれてくるはずです。
エスカロップとは、根室市限定で通じる、昭和の時代から愛されているご当地グルメの料理名です。
語源はフランス語で”肉や魚の薄切り”の意味らしいですが、そんなことは関係ありません。根室で楽しむエスカロップという料理は具体的に言うと以下のような料理になります。
- 筍やグリーンピースと一緒に炒められたバターライスを用意。
- その上にカツをのせる。
- デミグラスソースをかける。
- サラダなどもワンプレートにのせ終了。
文字にすると簡単な料理ですが、実際に食べてみるとお店ごとに風味が異なっていたり、もちろんデミグラスソースの味は店ごとに異なりますし、楽しく食べることが出来る料理です。
地元根室では「エスカ」という呼称でも通じるほどに浸透しています。
根室市のソウルフードとなったエスカロップを知りたいのであれば、「どりあん」に行けば全てわかる。
根室以外の人では聞きなれない食べ物「エスカロップ」
一体どのような食べ物なのか?と起源が知りたい方は、元祖のお店では無いですが、その答えは、エスカロップを語るうえで外せない2店舗のうちの一つ、「どりあん」に行くと全てがわかるようになっていました。
出典:どりあん 店内掲示物
簡単にまとめると
- 昭和三十二年に開業した「モンブラン」という店で、昭和三十八年にメニュー化される。「モンブラン」自体は、昭和四十年に倒産廃業。
- 昭和三十八年に「モンブラン」から独立した梅田勝利さんにより「ニューモンブラン」開業。
- 昭和四十四年「ニューモンブラン」で修行した小滝文吾さんが「どりあん」開業。
という流れのようです。
元祖のお店である「モンブラン」はもうないのですが、そこで修行した人が独立して「ニューモンブラン」をつくり、エスカロップというメニューが途切れることなく伝承されたことが解ります。(内情はわかりませんが)
元祖・発祥グルメを食べ歩きたい人は、「ニューモンブラン」にてエスカロップを食べる必要があります。
また、「エスカロップの起源」として、書かれていた内容は興味を引く内容でした。
エスカロップの起源
昭和三十二年、別海町の網元・鈴木和彦氏が根室に《モンブラン》という喫茶店を開店した。今から約半世紀前の話だ。
そして昭和三十八年。新しいメニューの考案に頭を悩ませていた鈴木さんは、取引先の紹介で、横浜の《イタリアンクオーター》(元町と山下町に今もあるイタリア料理の名店)で働いていた北海道茅部郡砂原町出身の古村欣也さんを《モンブラン》に迎える。
古村さんにしてみれば故郷を出て八年、「北海道ならどこでも」という望郷の念やまずの時だった。新婚、三十歳のときである。
そうしたことを抜きにしても《モンブラン》は、調度、食器、店構えなどのすべてが当時の東京にもないほど立派で、下見にきた古村さんをその気にさせたという。
昭和三十年後半、新橋の《グリル明治》の小川光男シェフ(《銀座コックドール》の名シェフ・小野正吉の愛弟子)が出していた、エスカロップの原形ともいえる「エスカロッピーニ」。横浜の《イタリアンクオーター》以前に《グリル明治》に勤めていたころ、古村さんも小川シェフ直伝のこの人気メニューを作っていたそうで、「エスカロップ」は新橋から横浜を経て根室にやって来た伊仏合体料理?といえるのかも。
出典:ヌプカ2000 Vol.2
どうやら現在では根室市の名物料理となっているエスカロップの源流は、新橋に在る様です。
え!?エスカロップ(正確にいうと元となったエスカロッピーニ)は、東京で食べられるの?わざわざ根室まで食べに来たのに、、、当方東京在住なのですが、、、と、まさかの東京で終了していた可能性にドキドキしましたが、
幸か不幸か文中に出てきていた新橋・グリル明治は既に店自体を発見することが出来ませんでした。
という事で、やはりエスカロップの歴史を感じながら食べるためには、北海道の根室市に訪れて実食する必要があります。
エスカロップの生みの親「古村欣也さん」のその後を追った情報には、素晴らしいブログがあったのでご紹介。
余談ですが、エスカロップを考案した料理人古村欣也さんは、昭和38年にモンブランに呼ばれ、そして昭和40年にモンブランが倒産した際には根室を去ってしまい、その後のエスカロップの歴史には登場しません。
この古村欣也さんのその後を知りたいな。と思っていたところ、実際にご本人にまで取材を行っていた素晴らしいブログを発見しました。
ご興味がある方は是非ご一読ください。
北海道根室市 「エスカロップ」 前編 ( 食べ物 ) - bakaフォトラーottiの写真三昧 - Yahoo!ブログ
北海道根室市 「エスカロップ」 後編 ( 食べ物 ) - bakaフォトラーottiの写真三昧 - Yahoo!ブログ
僭越ながら内容をまとめると、
- 北海道であればどこでもよいので帰りたく、根室に渡った。
- 当時、根室に若い女性が多いことから若い女性向けのメニューとして考案した。
- 奥様が根室になれず、昭和39年10月に根室を去った。
- エスカロップが根室に根付いていることはずっと知らなかった。
という内容でした。
多くの情報をみると、エスカロップは漁師対象に考案された、、、というような記述を見ることがありましたが、メニュー考案当初は、若い女性が対象という事で全く異なる考えで生まれていたことなどを知れて非常に興味深いです。
また、このブログにもどりあん店内で読むことができる、エスカロップの歴史をまとめてあり参考になります。
Jets' Diary-Shuffle It All (Jets似非旭川ラーメン研究所) : 2010年05月05日
食べ物を食べるときに周辺情報がたくさんあったほうが美味しく食べられる方は、是非一読してから根室に訪れるとハッピーになれると思います。
「ニューモンブラン」と「どりあん」でエスカロップを食べ歩いてきた。
いろいろとエスカロップの歴史を紐解くことができて満足ですが、大事な点を外してはいけません。
それは、おいしいのかおいしくないのか?
料理は全てこの判断が求められます。
今回は、メニューを開発した「モンブラン」は既にありませんので、その系統をついでるであろう、「ニューモンブラン」そして「どりあん」にてエスカロップを食べてきました。
ニューモンブランでのエスカロップ体験。レトロな店内は元祖・発祥グルメ食べ歩きにふさわしい店構え。
創業年からいうと、一番「モンブラン」の歴史を引き継いでいるであろう、「ニューモンブラン」
このニューモンブランは根室駅近くにお店を構えています。
訪れてみるとわかるのですが、電車移動では根室駅に到着するだけで結構な胆力が必要となります。
根室駅から歩いて数分でニューモンブランの文字を発見することが出来ます。
営業しているのかしていないのか、外から眺めるだけでは判別つきにくかったのですが、意を決して入店してみるとしっかりと営業していました。
店内は、調度品や掲示物、そしてメニュー含めレトロな雰囲気を醸し出しています。
お目当てのエスカロップはメニューの中にひっそりと掲載されていました。
私だったら、もっと大々的にメニューに「おすすめ!」とかやってしまいそうだなと思う訳ですが、このメニューにひっそり系は他の元祖・発祥の店でも見ることが出来る傾向ですね。
大々的に出す店もあれば、当たり前のメニューとして掲載している店もあり、ニューモンブランは後者でした。
↑ニューモンブランのエスカロップ
エスカロップは初めて食べたのですが、おいしいですね。
バターライスになっているご飯部分もしっかりと味がありますし、カツは薄い状態のため、油を感じることなく食べ進めることができます。
どちらかというと、とがった味は一切なく、優しい味。普段づかい出来るメニューだと思いました。
うまい。
もくもくと食べたら5分ほどで食べ終えてしまいました。
「どりあん」は洗練された雰囲気。立地的にも客入りはこちらのほうが多かった。
ニューモンブランでエスカロップを食べた後は、次なる目的地「どりあん」に向かい、ニューモンブランの味を忘れないうちにエスカロップを食べなくてはなりません。
どりあんは、根室駅からは離れるのですが、近隣にイオンがあったり道路的にもアクセスしやすかったりと、立地的にはニューモンブランよりも利用しやすい場所に在るなと感じました。
また、お店の雰囲気も全く異なり、どちらかというと「どりあん」のほうが洗練された雰囲気。
外観も入りやすい店でした。
店内も、女性のグループ客がたくさんいたりと利用しやすそうな印象を受けます。
↑メニュー。エスカロップスペシャルが気になるが、比較のために通常のエスカロップを頼む。
メニューも画像が多用されており、初めての人でもどういった料理か想像しやすい配慮がされていました。
元祖・発祥に近づきたい!という人以外は、「どりあん」を利用することをおすすめします。
肝心のエスカロップは、これまた美味しかった。
料理を表現する語彙力が乏しいため、うまい、おいしいしか出てこないのですが、味はニューモンブランに非常に似ていた気がします。
ただし、デミグラスソースは両店ともに方向性が異なりました。どちらかというとどりあんのほうが濃厚系、ニューモンブランのほうがさっぱり系。
この辺りで好みはでるかもしれません。
食べ比べてみた結果、「どちらもおいしかった。」しか評価できない点が悲しいですが、迷ったら私のように二つ食べるという手もあります。お腹はちきれそうになるのであまりおすすめはしませんが。
根室と言えばさんまや花咲ガニが有名ですが、どちらも「旬」がある食材です。幸いなことにエスカロップには旬がないとおもいますので、いつの時期に根室を訪れても美味しく食べることができるご当地グルメとなります。
出張・観光にて根室を訪れた際にはエスカロップ探訪してみるのもおもしろいとおもいます。